名前だけは有名な
「歯ぎしり・食いしばり」
とは?
歯ぎしり、食いしばりは専門用語で合わせて「ブラキシズム」といい、歯をぎりぎりとすり合わせたり、噛み締めたりする行為を指します。無意識のうちに行っていることが多く、特に眠っている間にしている方は一緒に寝ているご家族などに指摘されるまで全く気づかなかったという方も多くいらっしゃいます。ブラキシズムは次の通り3種類に分類され、どれも顎関節や歯に大きな負担をかけてしまいます。
グライディング |
上下の歯をぎりぎりとすり合わせる歯ぎしり |
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クレンチング |
上下の歯を強く噛みしめる歯ぎしり |
タッピング |
上下の歯を噛み合わせて カチカチと鳴らす歯ぎしり |
ブラキシズムが継続すると、歯がすり減って変形したり、冷たいものがしみる、食べ物を食べる時に痛みがあるなどの症状が現れます。虫歯や歯周病がないのに、冷たいものがしみたり、噛むと痛いという症状がある場合はブラキシズムが原因の可能性があります。
また、ブラキシズムは歯だけでなく、顎関節に負担かけるため、朝起きた時に顎が疲れていたり、肩こりの原因になることもあります。
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睡眠時ブラキシズム
寝ている間、無意識のうちに行ってしまうブラキシズムを睡眠時ブラキシズムといいます。毎晩繰り返していると熟睡できず、不眠の原因になるとも言われています。睡眠中は無意識のため、意識がある時よりも大きな力でブラキシズムが発生するため、歯や顎により大きな負担をかけることになります。睡眠時ブラキシズムは無自覚に行われ、一人で寝ている方は気づきにくいのも、症状が悪化しやすい要因となっています。
ブラキシズムと
睡眠時無呼吸症症候群のキケンな関係睡眠時無呼吸症候群をご存知ですか?この病気は眠っている間に呼吸が10秒以上止まってしまい、血中酸素濃度が低下する疾患で、大きないびきをかく方や肥満傾向の方に多いと言われています。睡眠時無呼吸症候群の患者様は歯ぎしりのリスクがそうでない方の約1.8倍とも言われており、併発しやすい疾患です。眠っている間に歯ぎしりをしている方は睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性があるため、注意が必要です。
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覚醒時ブラキシズム
ブラキシズムは寝ている間にだけ起こるわけではありません。近年、「TCH(歯牙接触癖)」というものが問題になっています。通常、上下の歯が接触するのは食事や会話の時だけで、唇が閉じた状態でも接触せず、隙間があるのが正常です。ある研究によって、1日のうち上下の歯が接触している時間は20分以下ということが分かっています。しかし、覚醒時ブラキシズムのある方は、食事や会話以外の時間も歯と歯が接触しているため、歯や歯を支える組織にダメージを与えてしまっているのです。
あなたは大丈夫?
ブラキシズムセルフチェック
特に睡眠時ブラキシズムは自覚症状が乏しく、非常に気づきにくいのが特徴です。しかし、歯科医院で「歯ぎしりや食いしばりをしていませんか?」と指摘されたことがある、という方も多いのではないかと思います。歯科医師や歯科衛生士が診断の基準としているチェックポイントの一部を紹介します。ご自身に当てはまるものがあれば、ぜひご相談ください。
- パートナーや親から歯ぎしりを指摘された
- 気づくと上下の歯を噛み合わせている
- 下顎の骨が内側に膨らんでいる
- 歯に亀裂や欠けがある
- 肩こりや頭痛がある
- 頬の内側や舌の周りに歯の跡がついている
- 奥歯や前歯がすり減っている
- 虫歯や歯周病はないのに知覚過敏がある
- エラが張っている
- 歯の詰め物・被せ物・仮歯がよく取れる
- 朝起きたときに顎の周りに痛みやこわばりを感じる
虫歯のブラキシズムの原因は?
ブラキシズムの 原因は?
ブラキシズムの原因は、実ははっきりとはわかっていません。しかしこれから紹介する5つが原因ではないか、と言われています。
思い当たることがある方は、ぜひ注意してください。
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ストレス
人は強いストレスを感じると無意識に身体を揺らしたり、唇を噛むなどの行動が現れます。ブラキシズムもこのような行動の1つなのではないかと言われています。実際、研究によってストレスを感じたときのほうが症状が出やすいということがわかっています。
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過度な集中
仕事や家事、運動に夢中になっていると、無意識にクレンチングを行っていることがあります。緊張したり、ストレスが溜まっても起こってしまい、顔の筋肉が緊張して頭痛や肩こりの原因になるとも言われています。
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アルコール・タバコ
ブラキシズムは眠りの浅いレム睡眠のときに起こりやすいと言われています。アルコールやタバコは深い眠りを妨げる効果があるため、ブラキシズムのある方は悪化する可能性があり、注意が必要です。
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逆流性食道炎
逆流性食道炎は胃の内容物が逆流して食道が炎症を起こす疾患です。逆流性食道炎の方は逆流した胃酸や胃の内容物によってお口が酸性になりやすいため、それを中和するために、ブラキシズムによって唾液腺を刺激し、唾液を分泌しようとする働きがあると言われています。
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歯並びが悪い
歯並びが悪いと噛み合わせが安定しないため、そのことがストレスを生みます。虫歯や歯周病で歯を失ったり、成長や老化によって歯並びが変化することもあります。ブラキシズムはそのような変化を調整しようとして起こっている、とも言われているのです。噛み合わせに違和感を感じたら、ぜひご相談ください。
ブラキシズムを改善するには
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ストレスを軽減する
ブラキシズムの主な原因はストレスと言われているため、上手にストレスを解消し、身体のリズムを整えることが必要です。生活習慣を整え、毎日太陽を浴びて体内時計を整えるだけでも、脳内ホルモンが情緒安定などの作用をもたらします。また、適度な運動やタンパク質、ビタミンB群、亜鉛や鉄の摂取もストレスを軽減する作用があると言われています。体内時計を整えるためにも、スマホやパソコンの使用は眠る1時間前までにとどめ、眠る前にはハーブティや身体のあたたまる飲み物を飲むなど、速やかに入眠できる態勢を整えることが重要です。
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ブラキシズムの治療
当院では、マウスピースでの治療が可能です。噛み合わせや症状を考慮した、最適なマウスピース治療や、症状に合わせた薬物療法、噛み合わせや歯列不正に対する治療も可能ですので、ぜひご相談ください。
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ブラキシズムの原因となる
要素の排除ブラキシズムの原因ははっきりわかっていませんが、ストレスや睡眠時無呼吸症候群、逆流性食道炎はブラキシズムを悪化させる要因となっています。そのため、これらを排除することで、ブラキシズムの症状を軽減させることができます。歯並びが悪い場合には矯正治療も可能です。また、生活習慣の見直しも重要なため、これらについてしっかりとアドバイスさせていただきます。