咬合治療とは?
咬合治療は虫歯や歯周病などによって歯並びや噛み合わせに問題が生じてしまった、もしくは将来的に問題が生じる可能性がある、元々の歯並びや噛み合わせが良くない、などの場合に歯の位置や形、歯並びを整えて理想的な噛み合わせを再構築し、現状の問題点を美しく機能的に改善する治療です。
咬合治療の目的
purpose- 失われたり弱くなってしまった咀嚼、
嚥下、発音などの機能の回復 - 見た目の美しさの改善
- 人生や生活の質の向上
咬合治療の流れ
咬合治療の流れ
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検査
まずはお口の中の状況を正確に把握します。歯周病があるとせっかく治療しても歯が動いてしまうため、咬合治療を進める上で歯周病の治療は必須となります。また、歯の形や大きさ、現在の噛み合わせを把握するため、口腔内写真やレントゲン写真、お口の型取りなどを行います。
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カウンセリング
検査によって得たデータをもとに、噛み合せや歯肉の状態、虫歯の有無などを写真をご覧いただきながら説明させていただきます。まずはご自分の口の中がどのような状態なのかを理解していただく必要があります。そのうえで、正しい噛み合わせにしていくにはどのような治療法があるのかをご案内いたします。
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初期治療
重度の歯列不正や歯の欠損、歯周病がある場合には先に矯正治療やインプラント治療、歯周基本治療を行います。欠損部(歯がない部分)をブリッジや義歯で補う場合には、仮の義歯などで対応します。インプラント治療が必要なケースでは、インプラント治療を後に行う場合もあります。
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ワックスアップ診断
初期治療が終わった段階で型取りを行い、現在の歯型を元に理想的な噛み合わせをやわらかい蝋(ワックス)で3次元的に再現します。患者様にご覧いただきながら、理想の見た目と理想の噛み合わせが両立できる状態を検討します。
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プロビジョナルレストレーション
問題点を洗い出すため、最終的な補綴物(被せ物)に置き換える前に、ワックスアップ診断を元に、プラスチック製の仮歯を作製し、装着して生活していただきます。割れたりすり減りが激しい部分は力がかかりやすいため、厚みを変えたり、他の部分に噛む力を分散させるなど、より良い補綴物に仕上げるために問題点を改善していきます。
※テスト期間は個人差があります。 -
マテリアル選択
プロビジョナルレストレーションで問題がなくなったらいよいよ最終補綴物に置換していきます。この時、最適な素材(マテリアル)を選択するのが長持ちするポイントです。当院では様々な素材を取り揃え、見た目の美しさと機能、力のリスクのバランスを考えながら最適なものをご提案させていただきます。
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オールセラミック
クラウン主に前歯に使用する素材です。透明感のある陶材を使用し、抜群の美しさを誇ります。カラーバリエーションも豊富で思い通りの色を再現することができます。
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メタルセラミックス
クラウン主に奥歯(臼歯)に使用する素材です。特殊な金属でできたメタルフレームの上に陶材を盛り上げた被せ物で、金属の強度とセラミックの美しさを兼ね備えていますが、透明感に劣ります。
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ジルコニアクラウン
現在歯科治療で使用される白い素材の中で最も固いと言われています。人工ダイヤモンドにも使用されるジルコニアを用いており、強度は折り紙付きですが、色のバリエーションが少ないというデメリットもあります。
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ゴールドクラウン
歯と同じような強度としなやかさ、熱膨張率をもった特別な金属です。噛み合う歯に優しく、強度も十分ですが、見た目が金属色というデメリットがあります。
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最終補綴
最終的な補綴物を装着し、噛み合わせを整えて、咬合治療は完了です。生活習慣や素材の劣化によって噛み合せに異常が再度生じることもあるため、継続的にメンテナンスが必要となります。
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メンテナンス
メンテナンスではお口のクリーニングや虫歯のチェック、噛み合わせに異常がないかなどを調べます。問題がある場合には治療などをご提案させていただきます。
噛み合わせを考えるポイント
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力のリスク
噛み合わせが悪いとはそもそもどういう状況でしょうか?
答えを考えるには、「良い噛み合わせ」というのがどういうものなのかを考える必要があります。良い噛み合わせは歯にかかる負担がバランスよく分散されている状態です。1本だけ強く噛んでいたり、噛んでいない歯がある場合などは良い噛み合わせとは言えません。咬合治療では、力のリスクがバランスよく分散されている状態を目指します。力のリスクを分散させるには?
力がうまく分散されていないということは、どこかが強く噛んで、どこかが噛めていないはずです。歯が倒れていたり、歯列弓(歯が並ぶアーチ)から外れている場合には、矯正治療が有効な手段となります。当院では、通常のワイヤーとブラケットを用いたブラケット矯正だけでなく、インビザラインやアソアライナーといった透明なマウスピースを利用した矯正治療も行っています。
また、ブリッジや入れ歯など、歯がない部分が噛めていない場合にはインプラント治療が有効です。ブリッジのポンティック(根がないダミーの歯)や入れ歯は強く噛むことができないため、残っている歯の負担が多くなります。インプラントは骨が歯を支えてくれるため、他の歯と同じように噛む力を負担することができ、力の分散を可能にします。 -
最大咬頭嵌合位(ICP)と
中心位(CR)検査で型取りを行うことで、顎の立体模型を得ることができ、立体模型を実際に噛み合せることで、その時点で最も噛む面積が広い最大咬頭嵌合位を知ることができます。最大咬頭嵌合位で噛めていない部分や早く当たり過ぎていて、他の歯が噛むのを邪魔しているような歯は治療の対象となります。
さらに、この立体模型から理想的な噛み合わせである中心位(CR)へと移行するにはどのような治療を行うといいのかを導き出します。咬合位を改善するには?
仮歯による調整や強く当たり過ぎている部分を削ることによる噛み合わせの調整などが一般的ですが、削って調整するばかりでは噛み合わせがどんどん深くなってしまい、顎の関節の負担が大きくなってしまいます。そのため、時には仮歯を少し高めに作り噛み合わせを高くする(バイトアップ)ことも必要です。足したり引いたりしながら、理想の噛み合わせを模索していきます。
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アングルの分類
Angleの不正咬合の分類は、上顎の第一大臼歯(6歳臼歯)は動かないという前提のもと、上下の顎の位置関係を定義する分類です。AngleⅠ級は歯列弓が正しい前後関係にあることを表しており、上顎第一大臼歯の頬側近心咬頭の三角隆線が下顎第一大臼歯の頬面溝と一致しています。このとき、咬合面積が最大になると考えられています。AngleⅡ級は下顎が遠心位(後方に下がっている)、AngleⅢ級は反対に下顎が近心位(前方に出ている)であることを表します。Ⅱ級、Ⅲ級の場合は噛み合わせの面積が減少する傾向があり、改善を必要とするケースが多くなります。この分類は矯正治療などで利用される分類で、治療では基本的にAngleⅠ級を目指します。
アングルの分類を
改善するには?AngleⅠ級の場合、第一大臼歯の咬合関係は改善する必要がありません。この位置を基準として他の歯の位置を整えていくことになります。
AngleⅡ級、Ⅲ級の場合はⅠ級を目指した矯正治療が必要となります。咬合治療の場合は他の歯の噛み合わせなどを考慮して、力のバランスが取れていれば無理に矯正治療を行わないこともあります。